交通事故で最も多いのが“外傷性頚椎捻挫”いわゆる“むちうち症”でしょう。
一般的には突然の衝撃により頭部が前後に屈伸し頸がムチのようにしなる事で様々な症状を訴えます。
頸部や頭部の筋肉はもちろん靭帯、骨、さらには脊髄神経等にもダメージを与える為、事故直後もそうですが数日から数週間経過してから症状が出る事も少なくありません。
コツンと少しぶつけられたぐらいなのに頭部や頸が揺らされ症状を訴える患者様も多いですので少しでも違和感があれば医療機関へ相談しましょう。
事故後、最初に整形外科や総合病院でレントゲン撮影をして「骨に異常はありません」と診断されることがありますがレントゲンだけでは筋肉や靭帯、神経への負傷はわかりにくいので頸部の痛みや筋肉の張り感、頭痛、吐き気、めまい、肩コリ、腕のシビレなど症状も多岐に及ぶこともあります。交通事故で最も多発する負傷ですので、さらに外傷性頚椎捻挫を5つの症状別に記載します。
- 1.頸椎捻挫型
- 外傷性頚椎捻挫の中で80%を占めると云われるのが“頸椎捻挫型”です。頸部や肩、背中の痛みを主症状とし腕の痺れは比較的少ないのも特徴です。胸鎖乳突筋、僧帽筋、頸部の斜角筋、菱形筋、棘上筋、棘下筋、大胸筋、小胸筋など頸部周辺の筋肉の痛みや張り感、運動痛が主症状ですが全身の重だるさや、めまい、頭痛、吐き気など訴える事もあります。一般的には数週間から数カ月で回復し予後も良好ですが天候によって増悪するケースもあります。
- 2.神経根症状型
- 頸椎の椎間孔内外における神経根への圧迫による症状で上を向いたり下を向いたり頸部の運動により症状が増悪し、頸部の痛みの他、腕や指先の痺れ感、痛み、重だるさが出れば神経根症状が疑われます。
他覚所見では頸部や肩、腕、指先の感覚異常に筋力低下、深部反射減弱などが陽性になります。
- 3.頸部交感神経症候群(バレ リーウー症候群)
- 最近では症状を訴える方が増加しているバレ リーウー症候群は頸椎を捻挫した際に頸部の交感神経が緊張し椎骨動脈が緊張し脳への血流が阻害され多様な症状を訴えます。
自律神経への阻害もあり後頭部痛、こめかみ等の偏頭痛、頸部の痛み、めまい、耳鳴り、吐き気、視力障害、顔や腕、喉などの感覚異常、手指の痺れなど様々ですが他覚所見が少ないのも特徴です。調子が良い日があれば突然不調を訴えたり、天候が悪くなると増悪したり精神的にも堪える事がありますので医療機関へ相談しましょう。
- 4.混合型
- 前述の神経根症状型と頸部交感神経症候群(バレ リーウー症候群)が混合してあらわれ、上記の症状を多様に訴え数カ月もの不調をきたすことも少なくありません。
初期では頸椎カラーなどで安静を維持し各種療法などで回復をはかりますが症状の増悪が著しければ専門医へ相談することも必要です。
- 5.脊髄症状型
- 脊髄への損傷を伴う負傷で衝撃により脊髄の膜が破れ脊髄液が流出する“脳脊髄液減少”の他、頸椎が脱臼骨折し脊髄を損傷すると両手足の麻痺や最悪の場合は呼吸困難を呈し死に至ることもあるので迅速な対応が必要です。
近年では“脳脊髄液減少”へ対して脳脊髄液を補充する処置もありますが、どちらにしても専門医への相談が必須です。